同時借電子書和紙本書,早上聽一本,晚上看另一本,簡直是精神分裂,難以投入內容。
試過改變策略,聽英文書,看的是中文書,而且還是短篇,算是好一點,只能怪自己太貪心。
《偵探冰室‧貓》由七位香港作家執筆,故事中有普通的家貓和野貓,也有植入晶片的間諜貓,會和人類說話的貓首領,以及會殺人報復的黑貓。
浩基老師在訪談中說,每篇作品都討論生命的價值。
暫時不同步聽另一本電子書了,所以翻出久已生疏的日文錄音,發覺很多生字都已忘掉。
小熊秀雄
焼かれた魚は、
『ああ、海が恋しくなった、青い水が見たくなった、白い帆前船をながめたい。』
ときちがひのやうになって皿の上で動かうとしましたが、体のまんなかに細い鉄の串がさしてありましたし、それに、焼かれた体が、妙に軽るくなってゐて、なにほど尾鰭を動かさうとしても、すこしも動きませんでした。
それで魚は皿の上であばれることを断念してしまひました。しかしどうかしていま一度あの広々とした海に行って、なつかしい親兄妹に逢ひたいといふ気持でいつぱいでした。
『ミケちやんよ、なにをさうわたしの顔ばかり、じろじろながめてゐるの、海を恋しいわたしの心をすこしは察して下さいよ』
と魚は、この家の飼猫のミケちやんにむかって、言ひました。
それは猫がさき程から、横眼でしきりに、焼かれた秋刀魚をながめてばかりゐましたからです。
飼猫のミケちやんは、
『実はあまり、秋刀魚さんが美味しさうなものだからですよ。』
と猫はごろごろ咽喉を鳴らしながら、秋刀魚の傍に歩るいて来て、しきりに鼻をぴくさせました。
魚はいろいろ身上話をして、自分を海まで連れていって貰ふわけにはいくまいかと、飼猫にむかって相談をいたしました、猫はしばらく考へてゐましたが
『それぢや、私が海まで連れていってあげませう、そのかはり何かお礼をいたゞかなければね。』
と言ひました、そこで秋刀魚は、報酬として猫に一番美味しい頬の肉をやることを約束して、海まで連れていって貰ふことにしました。
焼かれた魚は、海へ帰れると思ふと、涙のでるほど嬉しく思ひました。
そこで猫は焼いた魚を口に啣へて、奥様や女中さんの知らないまに、そつと裏口から脱けだしました、そしてどんどんと駈け出しました、ちやうど街端れの橋の上まできましたときに猫は魚にむかって
『秋刀魚さん、腹が減つてとても我慢ができない、これぢやああの遠い海まで行けさうもない。』
と弱音を吐きだしました。魚は海へ行けなければ大変と思ひましたので
『それでは、約束のわたしの頬の肉をおあがりよ、そして元気をつけてください』
と言ひました。
猫は魚の頬の肉を喰べて了ふと、どん後もみずに逃げてしまひました。
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秋刀魚:さんま
飼い猫:かいねこ
帆前船:ほまへせん
尾鰭:おひれ
咽喉:のど
啣へ:くはへ
端れ:はづれ
ゐ:「ゐ」「ゑ」「を」は「い」「え」「お」と同音になっていた。
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